事業が好調になると、賃貸物件に店舗や事務所を構えているよりも、購入した方が得だと考える人もでてくるでしょう。
しかし、その自社物件の購入は慎重に行うべきです。
勧められた不動産には、裏がある
売上が順調に成長し、利益が出てくると、賃貸で入っている物件よりも不動産を購入した方が、得なのではないかということを思うかもしれません。
そんなときに、普段取引している銀行員が、不動産の購入を勧めてくることがあります。
銀行から不動産の購入を勧められるなんて、一流の会社の仲間入りかと舞い上がることもあるかもしれません。
しかし、これは銀行から事業が信頼されている証ということではありません。
銀行が、融資の際に担保にとった不動産の処分を検討しているだけなので、ババ抜きになる可能性もあります。
本当にいい物件かどうかは、分かりません。事業にとって、必ずしも必要な不動産かどうかもわかりません。
さらには、その不動産を購入したことによって、投資が過大となり事業が傾くことがあります。それどころか倒産することもあります。
銀行から不動産の購入を勧められて、資金繰りが傾くというのは、決して珍しいことでは、ありません。
事業を順調に進めて経営をしていくことは、至難の業ですが、経営判断を誤って倒産するというのは難しことではありません。
それだけ、事業上の不動産の購入にはリスクがあります。
運転資金がいくら必要なのかを確認する
順調に事業が進み、利益もでて、お金もたまってくると、不動産の購入を考える。
そのときは、慎重に資金繰りを分析し、貸借対照表(B/S)軸に確認していくべきです。
購入する不動産のために、いくらまで借入ができるのか。
自己資金はどれだけ必要なのか。
運転資金は現状どのくらいで、どこまで増えるのか。
運転資金の計算式は、売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産ー仕入債務(買掛金・支払手形)になります。
利益とは、仕入れたモノ、作ったモノよりも、売上げた金額が高ければ、利益となります。
しかし、利益でも売上げた金額が、現預金として入ってくるには、時間を要することになります。
キャッシュ・コンバージョン・サイクルは何日か。
B/Sを確認し、自己資本比率が低く、資金回収が長く、運転資金がかかる状態。
このような場合には、たとえP/Lで利益が出ているといっても、運転資金が重たいので自社物件の購入は危険です。
B/Sの確認の仕方が分からなければ、自社物件の購入は、さらにリスクが高いものになります。
支出と経費になるタイミングがずれると、資金繰りが詰まる
賃貸物件の家賃を払い続けるよりも、不動産を購入すれば、借入の返済が終わった段階で自分のものになる。
この誘惑はかなり強いものです。
しかし、財務戦略として必ず覚えておく必要があることがあります。
それは、支出と経費になるタイミングが同時になるかどうかということです。
たとえば、賃貸の場合は、家賃を支払った時点で、支出があり、その支出分が経費になります。支出と経費になるタイミングが同時です。
借入で不動産購入をした場合は、元金返済が支出になりますが、元金返済は経費にならないので、支出と経費のタイミングが一致しません。
むしろ、支出したのに経費にならないので、経費が減る分だけ利益が増えて、税金の支払額が増えてるということが生じてしまいます。
ただ、不動産の購入においては、建物は減価償却として経費になります。しかし、支出の多い土地代は減価償却されないので、土地の部分は、永遠に経費にはなりません。
また、建物の減価償却費は、思っているよりも少なく、返済元金と一致することはないです。ほとんどの場合において、返済元金は、減価償却費よりも多くなります。
賃貸している賃借料と、借入で購入をした不動産の返済金額が同じだからと言って、不動産を購入する。
そこで、資金繰りは変わらないと思っていても、経費になる金額が変わり、結果、税金の金額が変わるので、返済が終了すれば自分のものになるといっても、ハードルは高いものです。
不動産は、購入をしてしまうと、その物件に不満があっても移転することが難しく、資金上の赤字を垂れ流し、また、売却をしようとしたときには、思っていたよりも売却価額が少ないというリスクもあります。
人口が減り、世帯数が減り、企業数も減っていく中での不動産の購入は慎重に行うべきで、その資金をより事業を発展させるために、B/Sの確認を怠らずに、経営をしていきましょう。
【おわりに】
花粉症なのに、どこにもマスクが売っていません。。。
【一日一新】
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