株式会社鴨川グランドホテルの財務資料が気になったので確認してみました。
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千葉県鴨川市を拠点とするホテル・リゾート事業を行なう企業
新型コロナウイルスの影響で、旅行などの移動が制限される世の中となっているいまの状況。
なかでも旅行業やホテル事業などは、飲食業と比べても給付金などの支援も少なく逆風が吹いているといえるでしょう。
そのホテル事業を営む株式会社鴨川グランドホテルの財務資料が気になったので、確認していきます。
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株式会社鴨川グランドホテルの財務資料を確認してみた
それではインターネットで確認できる資料で、株式会社鴨川グランドホテルの財務資料を確認してみます。
売上高を確認してみる
会社の規模感を確認するために、まずは損益計算書の売上高を確認します。
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売上高は約24億円となっており、前期(2020.3)と比較すると約36%ほど減少しています。
まず、2019年3月期の売上高が減少しているのは、ホテル関連事業において改修工事を行ない長期休業していたからということになっています。
そして、直近決算の売上高の減少は「新型コロナウイルスによる影響で長期休館をしたこと。」によるものとされています。
どうしても、事業の大半をホテル事業が占めているので、新型コロナウイルスに対してリスクヘッジをするのが難しいということが売上高に表れています。
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また、売上高の減少と共に損益も悪化しており経常損失が約6億4千万円、当期純損失が約5億円ということで赤字になっています。
売上高が約24億円に対し、赤字額が約5億円というのは業績はかなり大きな赤字だといえるでしょう。
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直近3期はいずれも赤字となっていて、2019年3月期も約10億円の大幅な赤字となっています。
2019年の改修工事における長期休業は、
「おそらくオリンピック需要なども見込んだ。」のかもしれませんが、
「新型コロナウイルスの影響で反転攻勢に出ることは難しい状態になった。」といえるかもしれません。
損益計算書のテクニック
新型コロナウイルスという予見できない影響によって、2021年3月期は赤字になったといえます。
そのような業績が悪い企業というのは、損益計算書の見せ方を普段以上に気をつけることになります。
今回の損益計算書の特別損失には「臨時休業による損失」ということで、約1億3千万円が計上されています。
この「臨時休業による損失」の内容は、新型コロナウイルスにより休業した際の人件費と減価償却費というものだそうです。
このような経費は「本来は販管費(この有価証券報告書では営業費用)に計上」されるものですが、
営業利益をうまく見せるために損益計算書のテクニックとして、販管費から除外をしたのでしょう。
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助成金収入や補助金収入は、雇用調整補助金やGOTOキャンペーンによるものとなっています。
損益計算書の見栄えを重視しなければならないほど(ほとんどの企業は重視しているでしょうが)の赤字の状態だと、貸借対照表の状態が気になるところですよね。
貸借対照表を確認してみる
損益計算書で赤字が続いているのであれば、貸借対照表(B/S)では純資産をまず確認したほうがいいといえるでしょう。
なので、純資産を確認してみます。
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まず、純資産合計を確認すると約△(マイナスという意味)4億6千万円ということで債務超過になっています。
債務超過とは、「資産 < 負債」
という状況なので、すべての資産を売り払ってもまだ負債が残っているということになり、危険な状態にあるということが示されているといえます。
そして、繰越利益剰余金も約△16億円となっており「過去からの赤字も解消されていない状態。」となっていることがわかります。
債務超過という状態では「いずれは上場廃止になる可能性がある」ということで、東京証券取引所から注意喚起が行われています。
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キャッシュフロー計算書を確認してみる
債務超過の状態に陥っているのでキャッシュフロー計算書で、資金調達の状況を確認してみましょう。
財務活動によるキャッシュフローを確認すると、短期借入金と長期借入金で約6億ほど資金調達を行なっています。
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このような業績では「資金調達をせずにはいられない。」
ということとともに、資金調達を行なえたということが確認できます。
そして現預金残高は約3億5千万円となっています。
借入金を確認する
最後に借入金を確認しておきましょう。
株主にもなっている千葉銀行が、約35億円ほどと最も多くの融資を行なっています。
また、借入金総額は約55億円と売上高を超える水準となっています。
しかし、貸借対照表に有形固定資産が約55億円計上されているので、ただちに借入過多であるとはいえないでしょう。
ただ、業績の回復が遅れるほど債務超過の状況が悪化し、返済可能性も危ぶまれると考えられるかもしれません。
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まとめ
新型コロナウイルスの影響もあり、ホテル業界は厳しい状況となっていることがこの財務資料で確認することができました。
また、有形固定資産などの不動産が大きな部分を占めるホテル事業では、
「借入金も多くなり機動的に業態転換をする。」のは厳しいといえるのでしょう。
損益分岐点を下げるといっても限界がありますし、事業譲渡といってもいくらで売れるのかといったことも注意しなければなりません。
今後どのような手を打つのかはわかりませんが、余力は少ないといえる財務状態だといえるかもしれません。
【おわりに】
設備投資額が大きい業種は、参入障壁が高いといえますが「想定外」のことが起こると一気に固定費の大きさに苦しむといえますよね。
早く、大手を振って旅行ができる日が来てほしいなぁと。
【一日一新】
あるカレースパゲッティ