「減価償却費は簡単にいじれる」の魔法は、銀行融資取引には効かない魔法

「減価償却費で調整をしよう。」

などということは銀行融資取引にとって「使ってはいけない魔法」だといえます。


常に桜が咲く魔法を手に入れたい。


銀行員は手間をかける気がなくなることもある


「担当先の経営支援に熱心な銀行員。」

「人事評価でのマイナスを極度に恐れる銀行員。」

「数字を上げることだけを意識する銀行員。」

などというように銀行員にも様々なタイプがいるものです。

そんな銀行員の多くは融資量(融資の実行金額)を伸ばすことを使命とされているといえます。

とはいっても銀行員というのは、社長とは異なり会社員。

なので「納得ができるまで目の前の仕事に取り組む。」というよりは、

「この手間をかけたくないから、今回の融資案件は謝絶にしよう。。。」などと、

「過度な手間を避けて、適度なところで融資案件を切り上げる。」ということも少なくないといえます。

そして、減価償却費でつまらない調整をしている会社というのは、

「どのようなタイプの銀行員でも手間をかける気がなくなる融資案件。」だといえるでしょう。



「減価償却費は簡単にいじれる」の魔法は、銀行融資取引には効かない魔法


最初にお金を支出したことを忘れたのか、それとも銀行融資の月々の返済を忘れているのか、

「お金を出さないで法人税が節税できる減価償却費の計上は、とても楽な節税になる。」

などと、まるで魔法のように言われることもある減価償却費。

だからといっても減価償却費を「打ち出の小槌。」のように考えて、

「計上する金額や計上することを見送る。」ということを行っていると銀行からの評価は落ちるといえます。

減価償却費を利益の調整弁に使っても銀行の評価(格付け)は変わらない

「減価償却費を計上しなければ、利益額が大きくなるので銀行格付けも高くなる。」

といったようなことを考えて、

「業績によって減価償却費を計上するかしないかの魔法を使う。」などという選択肢を取る場合もあるかもしれません。

たしかに、銀行員が決算書を確認した際に営業利益や当期純利益などの金額が多い場合には、

「この決算内容なら新規の融資提案ができるかもしれない。」と考えることも一瞬はあるといえます。

とはいっても、数秒後に減価償却費を確認すれば、

「減価償却費を計上していないのかぁ。」ということに銀行員はすぐに気がつくものです。

決算書を銀行員が確認する際に、

「この損益計算書に減価償却費が適正に計上されているのか。」ということを見落とすのは少ないといえます。

そして、銀行が格付けなどで担当先の会社を評価する際には、

「税引き後当期純利益」で判断するのではなく、「債務償還年数」という数字を重視して判断をしているものです。

債務償還年数 = (借入金の残高 ー 運転資金 ー 現金預金) ÷ (税引き後当期純利益 + 減価償却費)

債務償還年数はもう少し単純化すると、

債務償還年数 = 借入金の残高 ÷ (税引き後当期純利益 + 減価償却費)

となります(税引き後当期純利益としている金額は、様々な調整をかけるので決算書の数字とは異なる)。

この債務償還年数の計算では、当期純利益に減価償却費を足し戻すことになるので、

「減価償却費を計上していても、計上していなくても分母の数字は変わらない。」ということになります。

なので、減価償却費を計上していてもしていなくても、債務償還年数は変化せず銀行格付けが変わることはないといえます。

むしろ粉飾決算をしていると疑われる

個人事業者は減価償却費の計上が強制となりますが、法人の場合には減価償却費の計上は任意だということになっています。

なので、法人の場合には「戦略的に減価償却費の金額を調整する。」などと考えることもあるかもしれません。

とはいっても、税務上は減価償却費の金額によって税金の支払額は変わることもありますが、

銀行融資においては「債務償還年数」を軸にその会社の評価を行うことになるので格付けは変わらないといえます。

むしろ「減価償却費でセコく節税をしている会社。」というのは、

「他にも決算書に何かしらの調整を入れているのかもしれない。」ということを銀行員は考えてしまうものです。

銀行員が決算書の分析をする際には、

「減価償却費が耐用年数に基づいて適正に行われているのか。」ということを再計算する場合も少なくないといえます。

そして「減価償却費に調整が加えてられている。。。」ということが判明した場合には、

売上債権回転率などの他の財務指標を細かく確認し、

「粉飾決算の解明への緒を探す。」ことにするのか、

「手間だから融資案件を取りやめる。」という対応を取ることもあるものです。

たしかに、信用保証協会を使った融資の場合には、

「協会の担当者がこの粉飾に気づかなければ、今回の融資を実行しちゃうか。」ということを考える場合もあります。

しかし、減価償却費を調整しているような会社には、

「たとえ年商要件でプロパー融資の条件を満たしていたとしても、プロパー融資に取り組まれない事態。」が起こりえるのです。

もし「減価償却費以外は何の調整も加えていない。」という状態だったとしても、

「減価償却費の魔法を使う会社というのは信用できない。」という判断を銀行員はすることも多いので、

「減価償却費で決算書をいじる。」という行為はダメージが大きい魔法だと考えて対応してきましょう。


まとめ


減価償却費が魔法かのような論調を目にすることもありますが、

銀行融資対応を考慮すると「減価償却費で利益調整する。」という行為はおすすめできないといえます。


【おわりに】

花粉症のピークに来ているようで連日頭痛がひどいです。

花粉症にかからない魔法をかけてください。。。


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