減価償却費で節税という言葉には気をつけたほうがいい

「支出をしていないのに経費になる。」という魔法のような話。

「減価償却費。」

そんな魔法はありませんから。


商業施設の減価償却費は多い@たまプラーザ駅


売上に対する経費が多ければ節税にはなる


「税金をなるべく支払いたくない。節税したい。」

ということを考えているのであれば、

事業に関連のある経費にお金を使うことで、税金の支払いは抑えることができます。

なぜなら、支払わなければならない税金の計算を簡単に表すと、

(売上 − 経費) × 税率 = 税金

になるからです。

そうすると、経費が売上よりも多い場合には「税金をゼロ」にすることも理論上可能だといえます。

なので、もし「税金を支払いたくない。」ということであれば、「経費を増やせばいいじゃん。」といえるかなぁと。



お金を使ったときに経費になるのが理想なのに


「経費を増やせば節税になる。」

ということは、お金を使うことで節税することができるといえます。

しかし「お金を使ったのに経費にならない。」ということも、税金の計算では起こり得ることです。

たとえば、1,000万円の機械などの固定資産を購入した場合。

このような機械は、

「お金を使った分の金額がすぐに経費になるわけではない。」ということになっています。

なぜこのようなことが起こるのかというと、

「1,000万円の機械は、おそらく数年に渡って使用されるから、支出した年(期)だけで経費になるのはちょっとおかしいよね。」

というルールになっているからです。

もし、売上500万円の事業者が1,000万円の機械を買った年に、機械1,000万円が一括で経費になると、

売上(500万円) − 経費(1,000万円) = 赤字(500万円)

ということになり、税金の支払いはゼロになりますよね。

そして、この次の年には手元にある機械を使えばいいので、

売上(500万円) − 経費(0円) = 黒字(500万円)

ということになり、税金の支払いは多くなるといえるでしょう。

そして、このようなことが起きると、

「機械を使って売上を得ているのに、機械を使っている経費がないのは、売上と経費のバランスが悪いよね。」

という理論が展開されることになり、

「機械などの資産は支出した年に一括で経費にするのではなく。」

「使用をする見込期間(耐用年数という)に渡って分割して経費にしましょう。」

という減価償却のルールがつくられることになりました。

なので「お金を使ったらその使った年に経費になる。」のではなく、

一定額以上の(10万円や30万円など)資産を買った場合には、

「お金を使った金額ほどは経費にならず、お金はないのに税金は支払わなければならない。」

という、支出のタイミングと経費になるタイミングにずれが生じてしまうことがあります。

その反面、お金を支出した日以降の年には、

「お金を支出していないのに、減価償却費という経費が使える。」

「だから魔法の経費だ。」というようなことが言われたりしています。


減価償却費は経費のタイミングのずれ


減価償却費というのは「経費になっているのにお金の支出がない。」ということなのは、その通りだといえます。

なぜかといえば、経費というのは多くの場合、

経費 / 現預金 (お金を使ったから経費になる)

というように、お金の支払いがあることによって経費になります。

しかし、減価償却費の場合には、

減価償却費 / 機械 (機械の価値が減ったことによって経費になる)

などというように、お金の支出を伴わないから、

「減価償却費というおいしい経費で節税ができる。」と説明されることがあります。

とはいっても、そのような効果は多くの場合にはないといえるでしょう。

減価償却費というのは「そもそもは支出をしたのに経費になっていないという資産。」なので、

支出をした年には、

「法定耐用年数というルールによって、強制的に経費にすることを除外されている。」

不合理なものだといえるかもしれません。

なので、支出をした年から遅れること遅れて、

「やっと経費になったよ。」といったものが減価償却費だといえます。


減価償却費はおいしい経費ではない


「減価償却費には支出を伴わない。」

といっても事業を営んでいる場合には、

「設備投資は自己資金で行なってはイケない。」というのが原則だといえるでしょう。

なので「減価償却費となる資産は銀行融資を受けて購入すべき。」だといえます。

そうすると「減価償却費は支出を伴わない経費だ。」といっても実際には、

「経費にはならない銀行融資の元金返済という支出。」を伴っていることになります。

減価償却費 / 銀行融資の元金返済

「たしかに中小企業の場合には、銀行融資を受けて設備投資をしているだろうから減価償却費に支出が伴うのはわかる。」

「だけど不動産投資の場合には、減価償却費は節税になるおいしい経費でしょ。」

ということを言われるかもしれません。

たしかに不動産投資に関わらず減価償却費は「経費になる」ので、節税効果はあります。

とはいっても、不動産投資をしているから、

「減価償却費はおいしい節税経費だ。」などということはないでしょう。

もちろん銀行融資を受けて不動産投資をしている場合には、銀行融資の返済という支出は同じようにあるものです。

また、不動産投資というのは「いずれは不動産の売却を行なうという出口戦略。」が必要になるものです。

そして、その際には不動産売却益に対して税金がかかることになります。

その不動産売却益は、

不動産の売却代金 − (不動産取得費 − 減価償却費) = 不動産売却益

というように計算されるので「減価償却費としていままで経費になってきた金額。」は、

「結局、不動産を売るときに取得費から差し引かなければならない。」のです。

なので「不動産を売ったとき。」には、

「買った金額で売れたので、得も損もないから税金はかからないはず。」ということは通用しません。

なぜなら、いままで「節税」になってきた減価償却費という経費がここで清算されることになるからです。

「4年落ちのベンツを減価償却費で節税。」

ということも、同じ話です。

もし「4年落ちのベンツ。」が、言われているようにそれほど値下がりがしないものであれば、

「4年落ちのベンツ。」を売ったときには、

ベンツの売却代金 − (ベンツ取得費 − 減価償却費) = ベンツの売却益

というように、売却益に税金がかかるものなのです。

「融資を受けているので支出を伴い、後追いでしか経費にならず、売ったときには清算されて税金がかかる。」

というのが、減価償却費が本来もっている性格だといえますから。



まとめ


「減価償却費が魔法の節税になる。」ということではなく、

「なんでお金を支払ったのに一括で経費にできないのか。」ということに対して憤るべきでしょう。

そして、その減価償却費として経費にする年数というのも、

「法定耐用年数」というもので強制的に決められています。

法定耐用年数を眺めていると、

「実際に使用できる年数と違いすぎないかなぁ。」と思うものです。

「減価償却で大型節税。」

などということを聞いたら「お金を支払ったことを忘れしまったの?」といったことや、

「いやいや、出口戦略はどうするのよ。」というツッコミを入れていきましょう。


【おわりに】

「赤字でも減価償却費で節税できているから投資価値がある。」

そんなわけないでしょうと。

赤字は、赤字ですから。。。


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