銀行が融資取引の際にやってはいけないこと3選

「お金は貸すまでは、貸し手のほうが強い。」

と言われることもある銀行の融資取引。

その銀行の融資取引のなかでも「融資予約」「歩積・両建預金」「浮貸し」の3つは、行なってはならないことになっています。

今回はこの3つを取り上げていきます。


「進むな」ということではない。


融資予約


外回りをしている銀行員というのは、

ひとりひとり融資量という融資実行金額の目標を毎月課されているので、

毎日必死に融資先を探しているといえます。

なので「融資を実行したい。」ということを節に願って営業活動をしているものです。

とはいっても、その「融資を実行したい。」という気持ちを抑えきれずに、

「社長、御社なら5,000万円くらいの融資は全然大丈夫っすよ。」

といったようなことを言うと、問題になることがあります。

銀行というのは「融資は必ず実行できます。」ということは、「融資予約」に当たるとして禁止されているのです。

「この投資信託を購入してくれれば、来月の融資は必ず実行できます。」

「近々ある税理士先生のセミナーに参加して頂いたら、支店長の機嫌がよくなるので融資を実行できます。」

というように「融資ができることを約束する。」

という行為が融資予約になります。

「融資予約って何が悪いの。」と思われるかもしれませんが、

銀行員が融資予約をしていた融資が問題なく実行される場合には、何の問題も顕在化されないといえます。

しかし、銀行員が「この融資は大丈夫です。」といっていたのにも関わらず、

その銀行から融資を受けられなければ、大きな問題になってしまうといえるでしょう。

なぜなら「お宅が融資は大丈夫だって言っていたから、他の銀行に融資の申込みをしていないぞ。」

となり、銀行から融資を受けられずに、資金繰りが傾いてしまう可能性もあるからです。

そうすると、「この前の融資が受けられると言っていたのは何だったんだ。」

ということで大きなトラブルになってしまいます。

状況によっては、銀行に対して損害賠償を求めてくるというようなことにもなりかねません。

なので、銀行員というのは基本的には、

「今回の融資は大丈夫です。」というようなことは「融資予約に当たる。」として、いってはいけないことになっています。

銀行融資というのは、様々な事情が絡むこともあるので、

「決算書や取引振りを見て、この融資案件は絶対に大丈夫だ。」

と感じる会社でも、銀行の事情で融資ができないということもありえるのです。

このような事情があるので、銀行に融資を申し込んだ際に、

「いまいち銀行員は融資が実行できるかどうか、はっきり態度を示さない。」

というようなことが起こってしまうといえます。



歩積・両建預金(ぶづみりょうだてよきん)


銀行が一番やりがちなことのひとつが、歩積・両建預金かもしれませんが、これも禁止されています。

歩積預金というのは、手形割引などの際に割り引いた金額の一部の金額を、

「預金として銀行に置いてもらう。」というものです。

たとえば、500万円の手形を割るのというときに、

「今回の割引のうち100万円は、うちの銀行に預金として置いてくれないか。」

というような依頼をするということが、歩積預金となります。

この場合には、会社は本来500万円から割引手数料を引いた金額が自由に使えたはずですが、

そのうちの100万円は銀行が拘束してしまい、そのお金は使えないということになってしまいます。

また、両建預金というのは、証書貸付などを受ける際に融資金額の一部を預金として置いておかなければならないというものになります。

たとえば、「今回は2,000万円の融資を実行するので、500万円ほどは使わないで銀行に預けておいてくれないか。」

というような相談を銀行が行なうということになります。

このように「融資をしたお金の一部を拘束して使わせない。」というものが、

「歩積・両建預金。」として、銀行がやってはいけない禁止行為とされています。

なぜこの歩積・両建預金が禁止されているのかといえば、銀行融資の金利が実質的には高くなってしまうからです。

たとえば、2,000万円を金利1%で借りた場合は、

2,000万円 × 金利1% = 支払利息20万円

となるので、融資の表面金利と実質金利は同じ1%になります。

これが500万円は実質的には使えない場合だと、

支払利息20万円 ÷ 1,500万円(2,000万円−500万円) × 100 = 実質金利1.3%

というように、実質的には1,500万円しか借られていないのに、支払利息は20万円支払わなければならないので、

実質的な金利が約1.3%ということになり、銀行融資の表面金利より負担が増えてしまったといえるのです。

また、「500万円は担保として取っている。」ということにもなります。

なので、歩積両建預金というのは、銀行側が「融資契約以上に儲けることができ、貸倒れのリスクも軽減している。」

ということで、「銀行だけが得をし借りている側は損しかない取引。」なので禁止されています。

「社長、今回の融資のあとに定期預金を500万円組んで貰えませんか。」

と銀行員に言われた場合には、「それって歩積両建預金なのでは。」といってみるべきでしょう。



浮貸し


融資をしたくて仕方がない銀行員として、やるせない場面のひとつが、

「融資をして欲しいという会社があるのに、融資ができない。」ということです。

なぜ、銀行が融資を実行できないのかといえば、多くの場合には決算書の業績が悪いからになります。

その決算書の業績が悪いといっても、

「いままで何年も担当してきた会社の業績が悪化してしまい、融資ができない状態。」

となってしまうのは、銀行員としても心苦しいものなのです。

そのようなときには「何とかして融資をできないものか。」ということを、銀行員も考えることがあります。

そんなことを考えているときに「この5日間だけ、あと500万円あれば資金ショートしないのに。。。」

という相談を受けたとすると「5日間なら、じぶんの預金を使って個人的に貸してもいいかなぁ。」

という心情になってしまうのも、銀行員の性だといえるかもしれません。

しかし、このような「銀行員の個人的なお金を貸す。」という行為は「浮貸し」として禁止されています。

他にも「あの会社を何とか助けたい。」と

「銀行の他のお客様からお金を集めて融資をする。」という行為も浮貸しとなります。

「銀行員の地位を利用して、じぶんのお金や他のお客から、わざわざお金を集めて融資をするやつなんているの。」

ということを思われるかもしれませんが、

銀行員というのは取引先に情が移ってしまうこともあるものなのです。

たとえば、浮貸しの事例として、

500万円浮き貸し 職員懲戒解雇 年内にも刑事告発

元総務部係長の40代男性が、顧客から現金を借りるなどして計500万円を知人女性に貸し付ける「浮き貸し」と呼ばれる不正を行ったと発表した。金融機関の職員による浮き貸しは出資法で禁止されている

山陽新聞より

といったような事件は、たびたび起こっているものです。

このように、銀行員などがじぶん自身や第三者の利益を図るために、

その地位・職務を利用して不正に貸し付けなどを行うことは「浮貸し」として禁止されています。

なので、銀行というのは銀行員がお客様と親密になりすぎないように、

「転勤を繰り返す。」というような仕組みになっているといえます。


まとめ


銀行員は融資をしたいといっても「いえないこと。」や

「やってはいけないこと。」というものを抱えながら、日々営業活動をしているものです。

このような銀行員の事情にも明るくなることも、資金調達の面で役に立つといえるかもしれません。


【おわりに】

今日は、銀行に行った帰りにかなりの雨に降られました。

こういうことは、この夏2回目です。もうびしょ濡れでした。。。


【一日一新】

ミニッツメイド 朝の健康果実 カシス & グレープ

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