新型コロナウイルスの影響で、移動の自粛が求められているなか、旅行会社の財務にはどのような影響があるのかを確認してみます。
移動の自粛が求められる時代
新型コロナウイルスの影響で、「人との接触を避けるべき、移動をなるべくしないように」という世の中になってしまいした。
それにより、ちょっと前までは、AIに強い業種だと言われていた、飲食業や旅行業が大きなダメージを受けています。
今年(2020年)に、税理士として独立開業したわたしも、「せっかく自由になったんだから、移動しまくっていろんな経験値を積みたい。」と考えていました。
税理士試験が終わって、独立したからこそ全国を車で回ってみたり、海外旅行にと考えていました。
しかし、いまはウイルスの感染拡大を防がなければならない時代。
AIには強かったはずの産業が、感染症には弱かったということが露呈してしまいました。
それでも旅行に行く際には、お世話になることが多い旅行会社の株式会社エイチ・アイ・エス。
当然、この影響を受けている財務状態になっていると思いますが、現状どのような財務状態にあるのかを、インターネットで手に入る情報をもとに確認していきます。
新型コロナウイルスの影響が、財務状態にどう影響をしているのか
さっそく、㈱エイチ・アイ・エスの財務資料をみていきましょう。
売上高の確認
㈱エイチ・アイ・エスの決算月は10月。ちょうど決算短信という、決算書の速報版のようなものが発表されているので、売上等がどうなっているか確認します。
売上高が約4,303億円となっており、前期の売上高約8,085億円より46.8%も下がっています。
これはかなりの厳しさですよね。
売上がほぼ半減してしまっています。
また、本業の儲けを示す営業利益もマイナス311億円と、前期の175億円の黒字と比べるとかなりの業績悪化に陥っていることが確認できます。
当期純利益も約250億円のマイナスとなっています。
売上が半減している割には、赤字額が少ないといえますね。おそらくコストカットをかなり行なったのだと考えられます。
従業員数や、拠点数などのコストカットを行なっているようです。
過去10数年の売上推移の資料によると、
売上が急減していることが、明らかです。
2012年頃の売上高と同水準になってしまっていますね。
キャッシュフローの状態
キャッシュフローを確認してみると、
営業キャッシュフロー(CF)は当然マイナスになっており、現預金等も804億円と前期の1,925億円から半減しています。
現預金等が半減するというのは、経営者としては怖いものです。
これだけキャッシュフローをが悪化しているにもかかわらず、財務活動のCFもマイナスになっています。
資金調達を大幅にすると財務活動のCFは、通常プラスになるはずです。
貸借対照表を確認すると、このような状態でも、借入金等は前期が約2,459億円に対して約2,330億円とそれほど増えていません。
多少株式発行により資金調達もしているとはいえ、減ったキャッシュに対してそれほど慌てて資金調達をしたということではないようです。
このあたりは、普段から資金繰りを丁寧に行なっていたという見方もできます。2020年10月期でも現預金は約952億円あります。
それでも、今後は不要資産の売却やさらなる借入などの、資金調達を行う必要性はあるといえます。
自己資本比率の確認
財務の健全性のひとつの目安である自己資本比率を確認すると、自己資本比率は下がっていません。
これは、旅行者が減った影響による、旅行前受金が大幅に減っている(約927億円から約140億円)といったことや、利益剰余金が減っていることが影響しています。
総資産という分母が減ったために、自己資本比率が減っていないということになっています。
しかし旅行前受金が大幅に減っているということは、将来の売上も減っていくということを表しているといえるので、今後も厳しい売上が予想されます。
また、純資産額という絶対額は約254億円減っているので、自己資本比率が減っていないといっても安心はできないといえます。
今後の見通しをどうみるか
記事執筆現在、GOTOトラベルの一時中止や感染拡大により、旅行者が簡単に増えるとは考えにくい状況になっています。
事業を取り巻く環境がかなり厳しいといえる、旅行業・テーマパーク事業。
決算説明会資料を確認してみると、㈱エイチ・アイ・エスも2019年の水準まで回復するには2022年までかかると想定しているようです。
本格的な回復まで2年を要するので、店舗を閉鎖してオンライン化を徹底していくなどのコストカットと利便性を高めるという点を重視する。
新規事業として、飲食業や就活サービス、EC事業といった事業も行うようです。
しかし、本業の旅行業やテーマパーク事業の落ち込みを賄うことは難しいでしょう。
VRなどを使用したリモートトラベルといっても、現地の空気感を感じることができないので、メインの事業とはなりにくいものでしょう。
Netflixのブラック・ミラーにあるような、ヴァーチャルな世界に行ける技術を編み出せれば劇的に業績が回復すると思いますが。。。
いずれにしても、このような危機時に守りに入って徹底的に効率化とコストカットに走るのか。
それとも、新規事業に打って出ていくのか。
どちらがいいのかというのは、経営者や従業員の方の力量に掛かっています。
ここまでみてきた通り㈱エイチ・アイ・エスは、今後、急に業績が回復するとは考えられない、厳しい状態にあるのは間違いありません。
【おわりに】
お客様から頂きものをすると、嬉しさと恐縮する気持ちになります。
さすがに、大人として季節の挨拶で贈り物をすることを考えていかねば。。。
貰ってばっかりで恐縮です。ありがとうございます!
【一日一新】
あるキムチ鍋